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真崎守の少女

この辺の繊細さは、まさに安部慎一においては意識的に取り上げられる。 「雨の少年」という短編の中で、ラストで彼女はいみじくも言うのだ。 「わたしは・少年だったんだ」と。 雨の日、ふと長い綺麗な髪の毛を切って、鏡の前で言うのだが、深読みすれば、彼女はその時「ニュートラル」な存在(両性具有)になったということだ。それに少し気づいたのだ。 それまでは単に男が彼女を抱くことによって、自分が女として存在してるしかないところから、単身、東京に出てきて、アパートで一人暮しをして、そんな雨の日、気まぐれに髪を切って、裸になって鏡に向かって、その姿を見て、それに気づいたのだ。 彼女の肉付きは、まさに充分なほどの女のそれであって、だから尚更、「少年だったんだ」という言葉が活きてくる。